山田 凌

「土地に根付く」

 皆様、こんにちは。写真家の山田凌(やまだ りょう)です。

 この度、Nine Gallery様からコラムを書くお話をいただきまして、「単純に面白そう!」「もっと自分のことや撮影地について知ってほしい!」ということで参加させていただきました。最近、なかなか作家としての活動が鈍っている状況もあり、自分にはっぱをかける意味合いもあります。全何回にしようかやどんなことを書いていこうなど具体的には決めていませんが、ゆるくお付き合いいただければ幸いです。

 Nine Galleryとは2021年に開催された 第1回ナインギャラリー公募展「9の穴」展でグランプリをいただき、その後、同テーマで個展も開催させていただきました。写真展はコロナ禍だったにも関わらず多くの方にご鑑賞していただき、改めて写真の選び方や展示方法など勉強することができました。

 現在は、都内にある日刊農業専門の新聞社で写真記者(カメラマン)をしながら、全国の農家さんから国会(農政)まで幅広くニュースを追いかけて日本中を駆け巡っています。普段、原稿を書くこともありますが、すごく苦手な部分なので「どうなることやら〜」と思っていますが、コラムを通して勉強していきたいと思います。

※本コラムは所属会社とは一切関係のない作家個人の意見・発言です。 

 初回ということで作家活動の現状についてご紹介したいと思います。私は現在、全国5ヶ所でドキュメント・畜産・農業・伝統文化の祭りなど様々な事柄に対し、「土地に根付く」をテーマとして撮影活動を継続的にしています。最近は仕事で忙しいこともあり、なかなか取材撮影に行けていないのが現状ですが、細々と撮影を続けています。

【以下、作品ステートメントと写真】

1. 北海道東川町  「時を紡ぐ」

 北海道東川町で出会った1人の少女の成長過程を2014年より取材・撮影している作品。東川町で開催されている「写真甲子園」に出場するために訪れた際、一人の少女に出会った。名前は「ひより」。私は彼女の屈託のない人柄に惹かれ、撮影を始めた。そんな出会いから10年の月日が経ち、彼女は22歳になり、現在は大学進学を機に東川町を離れている。私はファインダーを通して彼女の内で揺れ動く「心」の機微を写したいと考えている。


2. 岩手県久慈市山形村  「みなもと」

「日本短角牛」の故郷である岩手県久慈市山形村の生産者を2022年より取材・撮影している作品。昨今の物価上昇により山形村内には約10ほどの畜産農家があるが経営は逼迫している。今後、この状況が続くと頭数の大幅な縮小や離農する農家が出るなどの問題がある。また、新潟県小千谷市で角突き牛として飼育されている牛の大半が山形村を原産とする南部牛である。角突き牛の「みなもと」を1つのキーワードとして、越後との関係性を写したいと考えている。


3. 新潟県小千谷市  「ツナグ -おぢや牛の角突き- 」

 国の重要無形民俗文化財に指定されている「越後小千谷・牛の角突き」を2020年より取材・撮影している作品。  越後の角突きは、勝ち負けをつけないことが特徴である。現在、闘牛会では若手の担い手不足や娯楽の多様化によ観客収入の減少、また、飼料高騰による牛の頭数の減少など多くの問題がある。私は2022年から小千谷闘牛振興協議会に所属。2023年からは東山地区在住の同級生と2人で牛を共同で飼育している。5歳の雄牛で名前は「楽翔」。岩手県久慈市から導入した南部牛。厩柄(各牛舎の特徴・社会的象徴)を1つのキーワードとして、牛と人との関わり合いや闘牛があることでの地域の繋がりを写したいと考えている。


4. 埼玉県入間市  「茶の道」

 埼玉県入間市にある茶工房比留間園の狭山茶作りを2021年より取材・撮影している作品。入間市は狭山茶の中心産地であり、金子台地周辺は見渡す限りの広大な茶畑が広がっている。後継者問題や消費者のニーズの変化など様々な問題と直面しながらも熱意を持ってお茶作りに邁進する生産者さんの姿を写したいと考えている。


5. 愛媛県新居浜市  「 岸之下太鼓台 」

 愛媛県新居浜市で毎年10月に開催されている「新居浜太鼓台祭り」を2022年より取材・撮影している作品。この祭りは四国三大祭りに数えられている。密着取材を行なっている中萩地区の岸之下太鼓台は、2022年5月に約30年ぶりとなる太鼓台の新調を行い、5代目太鼓台での幕開けとなった。近年は新型コロナウイルスの影響で開催されなかった事もあり、祭り開催に青年部・自治会など地域全体が待ち望んだ祭りとなった。「太鼓台祭り」によって形成されている地域の繋がりを1つのキーワードとして、伝統文化を守る男たちの姿を写したいと考えている。


 5ヶ所に焦点を絞って定点観測的に撮影を継続しています。

 撮影する上で気にしていることはいかにその場に溶け込めるかです。お祭りなどの撮影は「お客様」になりがちです。そうならないように継続的に通い続け、自分がその場所でカメラを構えていることが自然な行為であると思われるように心がけています。

 また、「歴史」や「流れ」を知ることで事前にイメージが膨らみ、撮影時にただ撮るだけでなく、頭を使いながら瞬時に判断して撮影することができます。

 「土地を歩き、話を聞きこと」それが私の写真の原点です。

山田凌

山田凌

山田凌 (やまだ りょう) 1996年生まれ。香川県丸亀市出身。 日本大学芸術学部写真学科卒業。

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