山田 凌

「フォトポジション」

 皆様、こんにちは。写真家の山田凌(やまだ りょう)です。

 2025年も早くも6月に入り、1年の折り返しが近づいてきました。ほんまにあっという間に過ぎたという感覚ですね・・・。今年、定めた目標を現状、ひとつも達成できておらず、このまま有耶無耶のまま終わってしまうのでは?と不安になりながら過ごしているところです。なんとかしなくては!

 最近のニュースでは、米に関する報道が連日、取り上げられています。先月からは農相も変わり、お陰様で仕事がすごく忙しくなってきました。合間を縫って撮影に出るのは体力的に苦しい時もありますが、負けずに頑張っていきたいと思います。

 5回目の今回は「フォトポジション」と題して、2022年から撮影を続ける愛媛県新居浜市で開催されている「新居浜太鼓祭り」が、現在開催中の大阪・関西万博に出場するということで密着撮影してきました。新居浜の太鼓台は、55年前に開催された大阪万博にも出場したそうです。

 私が追いかけているのは、岸之下太鼓台さん。中萩地区の太鼓台で2022年5月に現在の5代目の太鼓台に新調しました。撮影を始めたきっかけは、2022年の春。北海道東川町で写真展をしていた際に、観に来てくれた方がたまたま岸之下太鼓台の関係者でご縁があり、新調お披露目式から撮影させていただくことになりました。初めて、新しい太鼓台を観た時、「こんなにも美しくてかっこいい太鼓台があるのか!」と感動したのを覚えています。そこから10月中旬に3日間開催する秋祭りにもお邪魔させてもらい、今回人生で1度あるか分からない万博という大舞台で撮影する機会をいただきました。

 「太鼓台ってなんなんやろ?」と思う方も多いのではないでしょうか?愛媛県新居浜市をはじめとして、愛媛県の東部や香川県の西部で親しまれている伝統的な祭りで使う山車のことです。太鼓台の高さは約5.5メートル、重さが約3トンにも及び、男たち約200人が力を合わせて天高く差し上げる男祭りです。豪華絢爛、勇壮華麗なその様は、多くの観客を魅了し、また、四国三大祭りのひとつにも数えられています。

 各太鼓台の運営には、青年部・青年団と言われる20〜30代の若手が中心となった組織があり、何ヶ月も前から祭りの準備をしたり、当日は太鼓台運行など多岐にわたる業務にあたります。今回も青年部のみなさんと行動をともにしながら撮影を進めました。

【5月20日、22時】大阪南港に集合。青年部員やかき夫らはバスやフェリーなどを使って大阪入り。太鼓台は、事前に新居浜で土台まで組み立てられた状態でフェリーで運ばれ、港に到着。そこから移動して万博会場がある夢洲に向かう。

【21日、0時】万博会場に到着。トレーラーから太鼓台を積み下ろし、万博会場内を横断してイベント会場への約2キロの道のりを手押しで進んでいく。途中、大屋根リングも通過し、口々に「これだけでも見る価値があるな〜」と話す。

【4時半】太鼓や重、幕と呼ばれる飾りなどを装着して組み立て作業を完了。同じく参加する萩生東太鼓台・口屋太鼓台も準備を終え、会場に3台が揃った。組み立てを終えた頃には空が明るくなっていた。

【10時】開場とともに多くの観客が詰めかけた。青年部員たちも準備万端。かき夫の数は、3台の太鼓台で合計1000人を上回った。

【11時半】事前予約制で開催されたかき夫体験には多くの人が集まった。外国人や女性の姿も多くみられた。

【14時】2回目の演技。かきくらべでは多くの観客が見守る中で何度も放り投げを披露。太鼓台が差し上げられ、房が乱舞する姿はまさにあっぱれ。

【18時】最終演技。3台の太鼓台による「寄せ太鼓」が成功すると大きな拍手が送られた。日中は天候にも恵まれ、1日で約3万人が訪れたという。

【23時】演技終了後、雨が降り始めた。解体作業がされ、万博での展示を終えた。

 「祭りの写真は絵になりやすいからね・・・」なんて聞いたことはありませんか?ただ撮るだけでなんか良いように撮れちゃったみたいなのが多々ありますよね。(私もよく撮らされます・・・)そうならないように今回、撮影で常に意識したことは、どのようにして写真に万博感を出すかということ。綺麗に撮るだけでは、いつもの祭りと変わらないと考えて、できる限りらしさのある「フォトポジション」を探しました。例えば、大屋根リングと写すことや、普段同じ地区ではない口屋太鼓台と絡むシーンなど。また、岸之下太鼓台の凄さは日々の練習で培った団結力で「寄せ太鼓」や「放り投げ」など難しい演技を軽々とこなしていくこと。そういうところを1番いいポジションで捉えるために様々なアングルを探すことがミッションでした。

 一生に一度しかないかもしれない万博で撮影した太鼓台の写真は記録性が高く、今後重要なものになっていくでしょう。あの時、ファインダーを覗いて興奮しながら撮影した写真は私自身の心の中の感動も乗かっているように感じます。少しでも良いポジションを確保して他者が撮影出来なかった瞬間を収めることができた写真、それはすごく価値のあるものになると思います。それが「いい写真」を撮る秘訣なのかもしれません。

山田凌

山田凌

山田凌 (やまだ りょう) 1996年生まれ。香川県丸亀市出身。 日本大学芸術学部写真学科卒業。

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