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リス月誌「リスと私」

みなさま初めまして。この度ご縁ありまして全6回のコラムをさせていただくこととなりました、写真家の原田佳実と申します。げっ歯目リス科の動物(リスやモモンガやムササビ)が好きで、彼らのことばかり撮影しております。

月に一度更新してゆく予定なのですが、来週8月5日からNine Galleryで個展をさせていただくこともあり、最初の2回だけは2週続けてのコラムとなります。ゆるりとお付き合いいただければと思います。

Nine Galleryではこれまで何度かグループ展や企画展に参加してきました(数えたら6回!展示に参加していました)が、個展は今回が初めて。Nine Galleryで個展をすることを密かに夢見ていたので、いよいよその夢が叶うと思うと感慨もひとしおです。

そう、それで一体何の個展をするんだい?ってことですけれども。タイトルはズバリ「リスになりたい」です。もう真っ直ぐ、そのままの意味です。

私のことをご存知ない方は、何のこっちゃ?ですよね。

というわけで第1回の今回は「リスと私」についてお話ししていきたいと思います。

展示のタイトルを見てくださった皆さまから、「(ハラダは)もうリスだと思ってた」とか「とうとうここまできたか」とか「リスになりかったんだ!?」といった声をいただいております。

はい、そうですリスになりたいんです…って簡単に言えたらいいのですが、ほんの少しだけ心の内は複雑です。私の中ではリスは憧れの、手の届かない存在なのです。

アーモンドのような瞳。
⻑くてふさふさのしっぽ。

ネコ背ならぬリス背。
強靭な脚力に強い⻭と顎。
一人で生き抜く強さ。

 ある者は風を読んで暗闇を飛び交い、 

またある者は、目にも止まらぬ速さで木の上を駆け回る。

地面に縛りつけられた私はいつも天を仰ぎ、 

自由に動き回る彼らに憧憬の眼差しを向けている、ちっぽけな人間。

憧れは盲目に日々増してゆき、輝きがこぼれる。 

止まらないけど、止めたくない。

 どうしたら彼らのように生きられるのだろうか。

私は、リスになりたい。

「リスになりたい」ステートメントより

なりたいけど、なれない。もどかしく見つめることしかできない眩い存在。そんな思いでまとめたテーマです。

今やリス推しの私ですが、ずっとリスが好きで生きてきたわけではありません。これまで一緒に暮らしてきた動物はイヌやネコ、ハムスターなどでしたし、野生動物ではゾウやライオンなど比較的大型の動物が好きだったし、大学時代の研究対象はブタでした。それに、元来動物は好きだったけれど、私の興味はどちらかというとそもそもの生命の成り立ち、細胞そのものにありました(おそらく今も)。

交わることがなかったリスと私が交差することができたのは私が写真をはじめて2年ほど経った2016年の冬、北海道に撮影に行った時のことでした。泊まった宿のオーナーがガイドをしてくださり私をエゾモモンガに会わせてくれたのです(この時のことをもう少し詳しく文一総合出版さんのnoteに書かせてもらっております(こちら)。お時間あったらぜひ覗いてみてください)。

夕闇の中現れた大きな瞳。生まれて初めてエゾモモンガと目が合った私は、雷に打たれたような衝撃を覚えました。こんな愛らしい動物がこの地球上に、ましてや日本に存在しているとは。しかも日本にはエゾモモンガだけでなく、6種もの日本産リスが暮らしているだなんて。寝ても覚めても頭に浮かぶのはリスのことばかり。じっとしていられず、休みのたびにリスに会いにゆく生活が始まりました。

こうしてはじまったリス一色の生活。暇さえあれば車を飛ばしてもしくは飛行機に乗ってリスに会いにいき、夢中でシャッターを切り続け、撮りはじめて2年後の2018年には「りすぱら」を発表しました。

リスに会いに行くのが楽しい!リスの可愛さを知ってほしい!そんな想いで展示した「りすぱら」でしたが、この時展示を見ていただいた方から「なぜリスなのか?」という問いをいただいたときに「好きだから」以外の言葉が出てこなかったのです。なぜ?そんなこと考えたことがありませんでした。この時まだ写真歴も浅かった私は「言語化すること」の大切さがわかっていなかったのです。言葉にする、ということをそもそも苦手としていた私は、写真は言葉にしなくても想いを伝えられる素晴らしいツールだと思っていました。しかし写真は説明できなければただの自己満足に陥りかねません。自分自身がそのテーマについてどれだけ深く潜ったか、考えたか、理解しているか。それにはやはり言語化が大切だということ。それに気づくには時間が必要でしたが、やっとその答えに辿り着くことができました。その答えが、「リスになりたい」です。展示をみて、感じていただけたら嬉しいです。

「リスになりたい」はNine Galleryで8月5日(火)から、10日(日)まで開催予定です(最終日は17時まで)。8日の金曜日19時からはNine Gallery主宰の三村漢さんとトークをいたします。こちらもぜひ。

原田 佳実

原田 佳実

原田 佳実(はらだ よしみ)。東京都出身、在住。 リスの人。 個展【2018年11月「りすぱら」ギャラリーNadar/2020年1月「りすだもん」ソニーイメージングギャラリー銀座/2024年11月「ももんがたり」OM SYSTEM GALLERY】 著書【「森でつながるエゾモモンガ」(文一総合出版)】

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