原田佳実

リス月誌「リスと目線」

みなさまこんにちは、原田です。

第4回リス月誌、今月もどうぞよろしくお願いいたします。

ここ数日、少しずつ朝晩がひんやりしてきました。毎朝愛犬と散歩に出ているのですが、数日前玄関を出ると朝の澄んだ空気に乗せられて金木犀の香りがふわり。あぁ、長すぎた夏がようやく終わったんだなぁ。季節の変わり目、体調を崩しやすい時期ですのでみなさまどうぞお気をつけください。

9月の私は、3ヶ月ぶりに北の大地へ飛んでいました。リスに関しては1年間で二つのテーマを終えたこともあり、まだ次のテーマが見つかっていません。テーマが見つかってから撮影に臨むのがいい、というかその方が撮りやすいと思います。しかし撮っているうちに見つかるものもあります。どちらのパターンも経験しましたが、どちらが正しいとかはないように思います。

わりとお天気の引きが悪い私。今回も雨雨雨…。なので数日エゾリスと遊んでもらっていました。エゾリスは換毛するのですが、夏毛と冬毛では見た目が少し違います。夏毛の状態だと筋骨隆々な様子がよくわかります。これから寒くなるにつれ、徐々にふわふわであたたかな毛に包まれてゆきます。

ようやくお天気も良くなり、最終日にようやく山へエゾシマリスに会いに向かったものの、思うようにはなかなか出てきてもらえず後ろ髪引かれながら帰路…エゾシマリスが食べたのかはたまたホシガラスが食べたのか、ポツンとハイマツの球果が私をお見送り。確かに紅葉のベストシーズンも過ぎ、冬眠間近のこの時期。エゾシマリスの秋はもう終わってしまったのでしょうか。

しかし諦めの悪い私。このままじゃ秋を終われない!というわけで次の週に再び北上、弾丸で別の山へ。欲張ると大体不発になることもあるのでこういうことはあまりしないようにはしているのですが…ここ2年ほど山のエゾシマリスに会いに行けていなかったのですよね。だから欲張っちゃいました。

深まる秋に気持ちがはやります。

山の上には…いるでしょうか。

見えますでしょうか?岩の上にちょこんと。大雪山の雄大な大地の上に佇んでいます。エゾシマリスの体長は12-15センチメートル、この小さな動物をこんなに広大な景色の中で探すのは難しいのではないか?と思われる方もいるでしょうか。実はそんなに難しくはありません。

少し話は逸れますが、リスが生息する場所では自分の心が反応した風景を必ず写真に収めるようにしています。1秒でも速くリスに会いたい気持ちを抑えながら…

私は風景を「リスたちにはどんな世界が見えているのだろうか」という目で見ています。とにかく私はリス達と同じ景色が見たいのです。どんな暮らしをして何を考えているのだろうか。どこからどこへ行くのだろうか。この景色をここから見ていたのかな。あ、リスが好きな植物だ、ボロボロに散らかされた食痕があるなぁ、ここで食べていたんだな、とすればここはお気に入りなんだなとか。そんなことを思いながらシャッターを切っています。

私がこんなふうに景色を見るきっかけとなったのは、「リストメ」という写真集を作った2020年以前から。私の写真展にいらしてくださった方は見かけたことがあるでしょう。見てくださった方の中には、リスおらんやん!と思われた方もいるかもしれません。そうなんです。この本は、リスの目線になって見た風景。リスの目線なのでリスがほとんど出てこないのです。先日の写真展「リスになりたい」で完売となってしまいましたが、見本はありますので機会があったらぜひこちらもご覧いただけたらと思います。

「リスの目線」で景色を見ていると、彼らの方から景色に飛び込んできてくれるのです。私はそこでシャッターを切っているだけなのです。

エゾシマリスは日本で暮らすリス科の動物の中で唯一冬眠をします。山の上では10月に入ると雪が降り始めます。その頃にはしっかりと地下にある巣の中に食べ物を貯蔵し、冬を越す準備を完了しています。私が登ったのが10月1日。まだ気温がそこまで下がっていなかったこともあり、元気に走り回ってくれていました。雪が降り冬眠がはじまると、翌年の4月中旬〜5月はじめ頃まで眠りにつき(正しくは時々目覚めて食事や排泄をしてまた眠り、を繰り返す)地上(雪上)には出てきません。

こちらは6月の講演の時に作った資料なのですが、地下の巣穴はこんなふうになっているそうです。ただこの山の場合だと、ナキウサギも住んでいるがれ場という岩が折り重なった場所で、さらに地下は永久凍土となっているようで、横長に通路がつながっていて何頭かで巣穴や通路を共有しているのではないかという説もあるようです。冬眠の様子を見てみたいけど実際に見ることが叶わないのが残念です!

しばらく遊んでもらったあと、また来年会いに来る約束をして無事下山。思い切って来て良かった!!!

またまた余談ですが、実はこの3日前に軽く腰をギックリしてしまいまして、痛み止めを飲んで、なるべく荷物を軽くしての登山でした。

今回の私の持ち物リスト。カメラはR5markⅱと70-200mmにx2テレコンのみ、小さなザックに食料と水筒x3、サングラス、クマスプレー、携帯トイレ、ウェットティッシュ、防寒具を詰め込んで。小さな水筒にお湯を入れてきて山の上でココアを作って飲むのがお気に入りです。地上で飲む10倍美味しく感じます。食べ物は匂いが強いものは持っていかない、ゴミは絶対に落とさないがマイルールです。今回クマスプレーはモンベル大雪ひがしかわ店でレンタルしました。クマスプレーは飛行機に持ち込めないのですが、最近は借りられるところが増えたのでぜひ利用されてみてください。

ではまた来月に。読んでくださりありがとうございました!

原田 佳実

原田 佳実

原田 佳実(はらだ よしみ)。東京都出身、在住。 リスの人。 個展【2018年11月「りすぱら」ギャラリーNadar/2020年1月「りすだもん」ソニーイメージングギャラリー銀座/2024年11月「ももんがたり」OM SYSTEM GALLERY】 著書【「森でつながるエゾモモンガ」(文一総合出版)】

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