原田佳実

リス月誌「リスと自然」

こんにちは。この1ヶ月でだいぶ冷え込みが増し、冬が近づいてきました。皆さまいかがお過ごしでしょうか、私は寒さにまだ順応し切れておらず毎日震えております。でも凜とした冷たい空気が肺に入るのが、結構好きです。

最近会う人会う人に「クマに気をつけてね!」と声をかけてもらいます(ありがとうございます)。私が一人で撮影へ出掛けていることを皆さんご存知ですもんね、ご心配をおかけしております。今シーズンまだ出会っていませんし、元気にしております。しかし皆さん敏感になるのも無理はないですよね、テレビでは見かけない日はないほど連日クマ被害報道。被害数は過去最多であった2023年を超えました。

私がクマと遭遇したのは岐阜県の山中の道路でツキノワグマと1度だけ。車で走行中、道路脇に何か黒い物体がうずくまってるなぁと思ったらクマでした。私は驚き、少し手前で停車。クマを刺激しないよう車内から様子を窺っていると、車(私)に気がついたクマが慌てて右往左往。道路脇の法面に上がってみたものの結局降りて道路を横断、斜面を降りて山中へ消えていったのでした。

車中から撮った証拠写真

クマが市街地に出てくる原因がなんなのか、を少し考えてみました。

ニホンオオカミの絶滅。猟師の減少。敵が少なくなったシカ、イノシシ、クマ、サルなどの中〜大型哺乳類は温暖化も相まって(越冬できる個体が増える)増加傾向。また、シカが多い森は樹皮が剥がされ木が弱り、草は食べ尽くされ土肌が露出、健康な森とは言えない場所も増えています。クマだけでなくシカやイノシシも増えているので食べ物は取り合い、あぶれた個体は山から麓へ。過疎化し放棄された農耕地は荒れ、動物が現れやすい状況。ブナの不作も大きいですが、そもそも本州の山はヒノキやスギなどの植林された木が多いことも暮らしにくさを招いています。まだまだ問題はありますが、パッと考えるだけでもこれだけの要因があり、様々な問題が絡み合ってこの状況となってしまっているのだと思います。

斜面の植物を食むエゾシカ。

あくまで私個人の見解ではありますが、生態系の均衡を保っていたニホンオオカミが絶滅したことも、木を切り植林したのも、鳥獣が住める環境を減らしたのも、便利さと引き換えに温暖化を加速させているのも、私たちヒトがもたらしたものです。すでに自然と呼べるようなありのままの自然はほとんどなく、私たちの望む自然のみを残してきた結果が現状なのではないかと私は思っています。しかし、壊したのはヒトではありますが、生き物や植物と上手に付き合い生きてゆく未来をつくることができるのもまたヒトです。長野県の箕輪町ではゾーニングをし、昨年よりもクマの被害と目撃率が今年は減っているとの報告もあります。(https://toyokeizai.net/articles/-/916306?display=b

ところで、リスは自然界でどんな存在なのでしょうか。

リスはただ可愛いマスコット的な生き物ではなく、リスにも植林するというお仕事がちゃんとあります。ただ、リスはお仕事としてやっているわけではないし、リスにとってはこれは不可抗力でもあります。リスたちはクルミや種子を後で食べるため隠したり、冬などの食糧の乏しい季節にとっておくため土に埋めたり、冬眠時の食事のために巣に運んだりします。その際に落としたものや食べ残したもの、どこに埋めたか忘れてしまった種子が発芽し、新たな生命を宿すのです。そうして知らず知らず森を循環させています。モモンガやムササビといった樹洞を住処にしている子たちはシェアハウスをしています。彼らが利用していた巣を他のネズミやコウモリが使ったり、森の生き物たちで住処をシェアしているのです。また(あまり考えたくないですが現実として)、被捕食者であるリスたちは、捕食者にとっての重要なエネルギー源となって生態系を循環させています。

中〜大型の哺乳類だけでなく、リスやネズミのような小型哺乳類も増えることができて、消費される量よりも多くの植物を育て森を循環させることができたら、今より森が豊かになる未来がくるかもしれません。

現状から目を逸らさず、考え、見守り、遺し、行動できる。そんな人間になれたらと思います。

原田 佳実

原田 佳実

原田 佳実(はらだ よしみ)。東京都出身、在住。 リスの人。 個展【2018年11月「りすぱら」ギャラリーNadar/2020年1月「りすだもん」ソニーイメージングギャラリー銀座/2024年11月「ももんがたり」OM SYSTEM GALLERY】 著書【「森でつながるエゾモモンガ」(文一総合出版)】

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