鍵井 瑠詩

言の葉散歩 〜抽象と言葉〜

言の葉散歩 第二回のテーマは「抽象と言葉」です。
言葉という物の多彩さについては、前回存分に書かせていただきました。
そして今回、その中の一つを選び、探してきました。それは、カタチを与える言葉、です。

言葉の特性として、具体性というのがあると思います。(もちろん、その逆も然りですが)
つまり、物事を具体的に、はっきりとした輪郭で描くことができる、ということです。
例として、ペットボトルを書いてみます。
その透明なペットボトルは、小ぶりで手のひらにすっぽりと収まる。ボトルの全体に刻まれたひだは、光を受けるたびに細やかな影が生み、透明感を引き立てる。みずみずしいグリーンと白を貴重にしたラベルには、「いろはす」の文字。真っ白なキャップを回すと、軽い「カチッ」という音が響き、また滑らかな飲み口に触れるとひんやりとして、清涼感が広がる。
どうでしょう、形のある絵が浮かんだでしょうか。
なにもない空間から、輪郭を削り出し、カタチを与える。これが今回みなさんにお見せしてみたい言葉の側面です。

ではさっそく、カタチを与える言葉を探して行きましょう。
ということで、なんともあやふやな輪郭の写真を持ってきました。(要は抽象的な写真ということです)


写真なのかもよくわかりませんが、一応写真です。
まずなにが写ってるのかもわかりませんね。色は何色かありますが、形は、う〜ん、なんだろう、これ。
正直よくわかりません。まぁつまり、カタチがあやふやですね。
個人的には、これはこれで別に面白いのですが、せっかくなので言葉を探してみようと思います。


この言葉は、元々書いていた「星の底」という詩なのですが、この写真を見た時にぶわっと思い出しました。
どうでしょう、この言葉によって、写真に動きを感じませんでしたか?
縦書きの文章は右から読んでいくので、写真も右から左へ視線が流れます。右端の拡散された青い光から、真ん中の集合体へと潜っていく。そして左へ行くと、オレンジの光と、どこか星を思わせる肌色の光。
詩を通じて、この抽象的な写真に、流動的な動き、海流の音、深海の冷たさ、など、がカタチとなって現れるように思えます。

抽象からカタチを削り出す。もう少し探してみましょう。


一応、これも写真です。変な写真ばっかり撮ってますね。
これはどうでしょう。さっきよりも、より無機質な感じはします、もはや赤色の線のみですし、、、。
さて、この写真にカタチを与える言葉を探してみましょう。


こんな言葉を見つけてきました。
赤い線は、文字にするなら多分カタカナっぽいですよね。カタカナって冷ますとどうなるんだろう、っていう疑問が、ただの赤い線に鼓動を与えてくれるような気がします。

では次に、今回最後の抽象写真。
その前に、ふと思いました。ここまで楽しく書いてきましたが、読者の方々はついてきてこられてるんでしょうか、、。ちょっぴり、というかかなり不安ですが、こんな意味のわからないことを考える人もいるのだと、ある種人間観察のような側面からも面白がって読んでいただければ、幸いです。


さて、また性懲りも無く変な写真です。
みなさんも、ぜひ考えてみてください! この抽象的な写真、どんな言葉が浮かんできますか?
この写真にカタチを与えるなら、どんな言葉がいいでしょうか。
とりあえず、撮影した本人として責任をもって自分が言葉を探してみます。


とりあえず、こんな言葉を見つけてみました。
無数の光の線がカタチつくろうとしているのは、いったい何か。星座のように結んでみても、中々思う形にならずに、何度も試行錯誤をしている誰かがいる。見上げた空に見出そうとしているそれは、その人にとってどんなものなのか。
何か物語が生まれる予感がしてきます。


こういう言葉はどうでしょう。
今度は、この不思議な模様たちがかけがえのないものに見えていそうです。
全く印象が変わる、ということはないと思います。が、見えてくる物語の感触は違ってくるかもしれません。

第二回言の葉散歩 抽象と言葉
いかがでしたか? 抽象の中に言葉を見つけ、自分なりのカタチを作っていく。これは、簡潔にいうと作品の解釈をする、ということです。現代アートを楽しむ一つの方法かもしれませんね。
次はこの逆をしてみたいなと考えております。前回紹介した紅葉の写真をはじめ、写実的なものから抽象的な感覚を描いてみる、今回の逆ですね。むしろこっちの方がわかりやすいと思います。けれど、私の趣味趣向によりこの順番となりました。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。これからもぜひ、ごゆるりとお付き合いください!

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩(かぎい りうた) 2004年10月19日生まれ。神奈川県鎌倉市出身。 大阪芸術大学文芸学科在学中。 2023年 展示会「青を読む」 2024年 個展「瑠璃色の森」 詩写真集「青を読む」発売中

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。