鍵井 瑠詩

#1 プラハのアートギャラリーを巡る Galerie Kooperativy

チェコのプラハにワーキングホリデーでやってきました。
中欧ヨーロッパに位置するこの国では、中世の趣残る美しい石造りの街並みが広がっています。


そんなプラハのアートギャラリーとはどういったものなのでしょうか?
街を歩けば、国際的なものからローカルなものまで数多くのアートギャラリーが目に入ります。

そんなプラハのアートギャラリーを
大きな規模のものから小さなものまで、幅広く紹介していこうと思います。

一緒に鑑賞する感覚で、どうぞお付き合いください。

#1 Galerie Kooperativy

第一回で訪れたのはこちら。

石造りの街並みとトラム(路面電車)。プラハらしい景色の奥に見えてきた近代的な建物。

玄関に建てられたKooperativaのモニュメント。

Galerie Kooperativyとは?
ここで、すこしだけ本ギャラリーをご紹介。
Galerie Kooperativyはチェコの大手保険会社Kooperativaが運営するアートギャラリー。

普通の画廊のように作品を販売する場所、というよりも保険会社が集めてきた美術コレクションを市民に公開するという、美術館に近い施設です。

おそらく、チェコ国内でも特に有名なギャラリーというわけではないと思います。
私もFacebookの日本人コミュニティで紹介されていたのを見て初めて気がつきました。

チェコに滞在しているならではということで、ちょっとローカルな、地元の人が通うようなギャラリーを一番最初に取り上げてみました。

それでは、さっそく中へ入っていきましょう。
入って最初に目に飛び込んできたのは螺旋階段と巨大な木椅子のオブジェ。

無機質な白い螺旋階段と、アンティークな椅子のオブジェの対比とその調和に
独自の美のセンスを感じます。

『Otakar Nejedlý a jeho odkaz』

そして、今回訪れた展示会がこちら。
開催期間:2026年3月12日〜7月17日 入場料:無料

展示会のポスターと入り口。

・チェコの近代絵画を支えたOtakar Nejedlý
みなさん、チェコの画家と聞いたら誰を思い浮かべるでしょうか?
おそらく大抵の人は誰も名前をあげられないと思います。
芸術に興味がある人なら、ミュシャやクプカを思い浮かべるかもしれません。

ただ、Otakar Nejedlý(オタカル・ネイェドリー)を知ってる人は中々いないでしょう。
正直、ここにくるまで私も全く知りませんでした。

調べてみると、彼は20世紀前半のチェコを代表する風景画家で、プラハの美術アカデミーで教鞭をとった教育者でもあったようです。

今回の展示会の題『Otakar Nejedlý a jeho odkaz』日本語にすると「オタカル・ネイェドリーと、その遺産」という意味らしく、彼と選ばれし教え子たちの作品が展示されているようでした。

Otakar Nejedlýの写真


それでは、さっそく鑑賞していきましょう。

会場は大きく弧を描くような形をしていて、廊下を進むごとに異なる絵写真が次々現れてくる。

全てを紹介するわけにもいかないので、私が鑑賞して興味深かったものを一部抜粋してご紹介。

『Podřipsko』作者:Otakar Nejedlý

20世紀のチェコを代表する風景画家という前評判通り、入り口の一番目に入るところに展示されていたのはこちらの作品。

題名のPodřipskoとは、作者の故郷の地名なんだそう。プラハの北にある農村地帯、絵のような畑が地平線まで広がっていたのでしょう。

畑という平な土地でありながら、非常に深い空間を感じさせる構図で、低い位置の水平線も相まって空の造形に自然と目がいきます。畑を描いているようで、主役はこの空なのかも、、と思わされました。


美しいプラハの風景画が続く中、異様なタッチの絵が続くコーナーがありました。
そのあまりの画風の落差に驚きつつ、作者への興味が湧き立ちます。

『Indie – lov』作者:Otakar Nejedlý

ネイェドリーを語る上で、無視できない経歴は、画家のヤロスラフ・フニェフコフスキーと共にスリランカ・インドを旅をしたという点でしょう。

先ほどの繊細な風景画とは打って変わって、力強い狩猟の場面が描かれた本作は、その大胆な色使いやタッチは印象主義というよりフォーヴィスム的な印象を持ちます。

前情報では印象主義の画家と聞いていたので、少し困惑しましたが、ネイェドリーはその画風を人生で大きく変化させていったことでも知られているようです。

当時のヨーロッパ人の異国趣味、遠いアジアに別世界を見出して
その情緒をこの渦巻くような密林で表現したのだろうな、と勝手に想像を膨らませます。

『Jihočeská krajina』作者:Otakar Nejedlý

翻って繊細で美しい風景画。題名のJihočeská krajinaは「南ボヘミアの風景」という意味。

静謐な水と、夕焼け、画面に動きをもたらす鳥の群れ。
写実的で透明感のある美しい絵で思わず息を吐いてしまいます。

接写してみる。タッチがよくわかる。

鑑賞を進めていくと、画風が大きく変わっていく中、こんな絵も発見。

『V lese』作者:Otakar Nejedlý

印象主義からだいぶ時代を歩んで、抽象画や点描画のような画風になってきました。

ピサロのような点描技法というよりも、セザンヌとかの方が近いでしょうか?
インクの色彩をブロックとして重ねていってある種モザイク画的に絵を再構築していく。

写実から、印象、抽象と大きな絵画美術の潮流を泳ぎ切ったネイェドリーと共に、ある種近代美術史を振り返ったような感覚になりながら、モザイク画という原初の絵画技法に回帰する、という興味深い鑑賞体験ができました。

『PODZIM』作者:Otakar Nejedlý

最後に私が一番好きだった絵画をご紹介。
皆さんは、どんな感想をもちましたか?

接写してみる。

近代的な構図というか、中心に何も描かない余白がとても効いてる絵だなと思います。
ネイェドリーの描く風景画は、静謐さがとてもよく感じられて、空気感がとても好みでした。


作品の紹介はここまで、一周見終わると、ギャラリーの出入り口にこんな標識が。

展示会場には、私の見た限りはだれも運営者がいませんでした。

どうやら、展示関連の図録等はオンラインで注文できるみたいですね。

訪れた日は休日でしたが、人はまばらで、私一人だけの時間もあったと思います。
帰り際、子連れの家族とすれ違いながら帰りました。まだ小さな子供たちは、どの絵を気に入ったでしょうか。

プラハのアートギャラリーを巡る連載。また次のギャラリーでお会いしましょう。
それではまた。

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩(かぎい りうた) 2004年10月19日生まれ。神奈川県鎌倉市出身。 大阪芸術大学文芸学科在学中。 2023年 展示会「青を読む」 2024年 個展「瑠璃色の森」 詩写真集「青を読む」発売中

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