鍵井 瑠詩

#3 プラハのアートギャラリーを巡る Galerie Rudolfinum

中欧チェコの首都・プラハのアートギャラリーを巡るコラム連載。

街で撮影

プラハのアートギャラリーとはどういったものなのでしょうか?
街を歩けば、国際的なものからローカルなものまで数多くのアートギャラリーが目に入ります。

そんなプラハのアートギャラリーを
大きな規模のものから小さなものまで、幅広く紹介していこうと思います。

一緒に鑑賞する感覚で、どうぞお付き合いください。

#2 Galerie Rudolfinum

第三回で訪れたのはこちら。

プラハのヴルタヴァ川沿いにある、チェコを代表する現代美術の展示施設。
外観から圧倒される美しい建築です。
同じ建物の中にチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地であるドヴォルザーク・ホールもあります。

1919年からチェコスロヴァキアの議会として使用されていた歴史あるギャラリー。そんなGalerie Rudolfinumで今回訪れた展示会はこちら。

『DATAS: The Data and the Sovereign』
日本語訳にすると『データと主権者』
 中央・東ヨーロッパ、南コーカサス地域などのアーティストが参加する国際的な展覧会です。

今回訪れたのは不思議な縁があったからです。
というのも、なんとプラハでのフラットシェアハウスのルームメイトがこの展示会に携わっていたのです。
プラハの美大に留学している彼からの紹介で、今回足を運ばせていただきました。

印象的な入り口。
ネオ・ルネサンス様式の建築に思わず息を呑む。

入り口で展示会を見にきましと受付の人に声をかけると、パンフレットとシールをもらいました。
このマークは画家ギルド(職業組合)のロゴからきているそう。
ただ、鎌倉市民としては、どうしても北条家の家紋に見えてしまい、写真でも向きを間違えています、、。

展示会は三つのセクションに分かれていました。
① Spectres of the Leviathan(リヴァイアサンの亡霊)
② Islands of Insubordination(不服従の島々)
③ Songs of Refusal(拒絶の歌)

全てを紹介するわけにもいかないので、一部抜粋してご紹介。

『Whose Bones?』 Flaka Haliti ① Spectres of the Leviathan(リヴァイアサンの亡霊)より
この展覧会の大きな主題は、「データによる支配と、人間の自由」だと思います。
急速に肥大化していく技術革新、その中で人の自由や主権は埋もれてしまうのか。
現代社会への強烈なアンチテーゼが展覧会の作品に通じて感じ取れました。

この骨は一体誰のものなのでしょう。
猛獣のようにも、しなやかな飼い猫のようにもみえます。
題名が『Whose Bones?』の手前、私たちは答えを想像するしかありません。
ただ観察することしかできないのです。そうして曖昧な情報の中、自分たちで答えを出すしかないのです。
だがしかし、そうして自分の中での観察眼、審美眼を養うことこそが、この情報社会を生き抜く術なのだと訴えられているようにも思える印象的な作品。

『Militarised Urban Futures』 Mark Cinkevich

現代アートの展示会と思いきや、体験型の作品も発見。
ゲームのように遊びながら、軍事化された未来の都市をできます。

生まれて初めてxboxのコントローラーを持つ。

どうやら二人用で、監視側と住民で分かれて体験するようですが、今回は自分一人だったので、住民の方だけ体験。

『Deep Reality Markets』 Martyna Marciniak

AIの進化と共に、不安定になっていく世界情勢を風刺した作品。
これらは架空のですが、かなり事細かく作り込まれています

こう言う作品は在学中の大阪芸大でも似たようなのを見たことがあるので、若手現代アーティストは海を跨いでも同じ危機感を抱いているようです。

『HEAT』 Jelena Visković ③ Songs of Refusal(拒絶の歌)より

映像作品の舞台はバルト海沿のスパ。
年齢を重ねた女性たちが余暇を過ごす穏やかな空間。だがその背後には、環境破壊や戦争の脅威が存在している。
また、施設の仕組みの中には、人々を監視・管理する技術が組み込まれている。

監視社会へのだけでなく、この作品では老いうのも重要なテーマ。癒しや健康の中にも監視する技術は入り込み、自分たちの身体のそのものへの疑いを持たせることに成功しています。

『Soft Substractions: A Manual for an Inhuman Exit』 Leon Sahiti

展示会の一番最後に置かれていた作品。
左の英文は訳すと「その脱出が非人間的なのは、そもそも人間こそが、最初に失われたものだったからだ。」

もちろんこの人間が失われたと言うのは人類が滅亡したと言う意味ではなく、人類が繁栄しながらその人間性を喪失していくというメッセージが込められたものでしょう。
この作品を実際に、展示会の出口に置かれると、否が応でも自分自身を重ね合わせるほかありません。
この世界からの脱出。進化からの脱出、または成長、繁栄、社会システム。
それらに従うことでも、はたまた脱出することでもない第三の選択肢を模索しなくてはならない気がしてきます。


ヴルタヴァ川沿いに建つ、壮麗なネオ・ルネサンス様式の建物「ルドルフィヌム」。1885年に完成したこの建物は、音楽と美術の殿堂として親しまれながら、かつてはチェコスロヴァキアの議会としても使用された歴史を持っています。
そんな中この夏開催された現代美術展のテーマはデータと主権。
私たちの生活に深く入り込んだ人工知能やアルゴリズムは、社会を便利にする一方で、政治や経済、そして個人の自由にも影響を与えています。
データを管理する者が、私たちの未来まで決めることになるのでしょうか。歴史的な建築の内部に広がっていたのは、そんな現代社会の根本的な問いを投げかける作品たちでした。

プラハのアートギャラリーを巡る連載。また次のギャラリーでお会いしましょう。
それではまた。

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩

鍵井 瑠詩(かぎい りうた) 2004年10月19日生まれ。神奈川県鎌倉市出身。 大阪芸術大学文芸学科在学中。 2023年 展示会「青を読む」 2024年 個展「瑠璃色の森」 詩写真集「青を読む」発売中

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